【怪談】事務服を着た女
こんばんは、山根こね子です。
私は霊感はないと自分では思っていて、不思議な体験をするとしても姿を見るわけではなく音を聞くということが多いです。
そんな私でも、1度だけ「見たかもしれない」そう思う体験をしたことがあります。
2年前、職場でちょっとしたトラブルがあり、事務処理のため残業をしていました。
時刻は20時
一旦休憩をしようという話になり、それぞれ1階の喫煙所やコンビニへ出掛けて行き、2階にある事務所には私1人となりました。
鼻歌を歌いながらLINEやTwitterを確認していると、背後から「ズズッ」と鼻をすする音が聞こえてきました。
「うわっ誰かいたんだ!恥ずかしい!」
そう思い、後ろを振り返ると誰もいない。
気のせいかと思いもう一度スマホを見ていると、また鼻をすする音に加えて咳払いの音も聞こえてきました。
立ち上がり、キョロキョロと見回してもやはり誰もいない。
疲れてるのかなと思い、コーヒーを淹れに給湯室へ向かいました。
マグカップにインスタントコーヒーを入れ、お湯を注ぎ、マドラーでくるくるとかき混ぜていると、こちらへ誰かが近づいてくる足音が聞こえてきました。
ふと音のする方向をみると、カーディガンの袖から白いシャツが覗く女性の手が右左に手を動かし、給湯室の入り口に掛かっているのれんをバサッバサッと1度ずつめくり去って行きました。
顔までは確認ができなかったのですが、コンビニに行っていた後輩の女性社員が戻ってきて私の居場所を確認しにきたものだと思い、のれんから顔を出して
「おかえり!」
声を掛けましたが、そこには誰もいませんでした。
15分後、休憩を終えた社員たちが戻ってきたところで先程の出来事を話しました。
すると「俺も事務服を着た女が横切るのを見たことがある」や「誰もいないのにキーボードを打つ音を聞いた」ということを口々に語り出し、それが皆共通して私の背後に位置する場所での話でした。
私の勤めている会社は、元々パチンコ屋さんだった建物を改築した場所で、屋上から従業員が飛び降り自殺をしたという曰く付きの物件でした。
もしかしたら、社員がたびたび見かける事務服を着た女は、今もここで仕事をし続けているのかもしれません。