むいしきのいしき

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【怪談】神社の前

こんばんは、山根こね子です。

 

今日は、最近友人のHさんに聞いた話を紹介します。

 

Hさんは大学時代、新聞配達のアルバイトをしていました。

 

いつも3時から1時間半程度、自転車で配達をしていたそうです。

 

ある冬の朝、寝坊をしてしまったHさんはいつもより30分ほど遅れて配達をスタートしました。

 

配達先の神社へ自転車を走らせていると、神社へと向かう石段の前におばあさんが立っているのを見かけました。

 

そのおばあさんは何をするわけでもなく、ただ石段の先にある神社を眺めていました。

 

 

「こんな時間に人がいるなんて珍しいなぁ」と思いながら、おばあさんのいる方へ向かってどんどんと自転車を漕ぎ、石段の前に自転車を停めました。

 

石段を登る前におばあさんに「おはようございます」と一声かけましたが、おばあさんからの返事はありませんでした。

 

 

「耳が遠いのかな」と思い、軽く会釈をして石段を駆け上がり、神社の裏手にある自宅のポストに新聞を投函し、石段を降りようと下を見るとおばあさんの姿はありませんでした。

 

 

神社の周りに民家はなく、一本道のその場所は隠れられるようなところもありませんでしたが、キョロキョロと辺りを見回してもおばあさんはどこにもおらず、不思議なことがあるもんだなぁと思いながら配達を続けました。

 

 

販売所に戻り、ちょうど同じタイミングでお店に戻ってきたYさんというおばさんに先程の出来事を話しました。

 

すると、数日前の早朝に神社へお参りに行く途中だったおばあさんが神社の前で交通事故で亡くなったということを教えてくれました。

 

そのおばあさんは早朝に散歩がてらのお参りが日課だったそうです。

 

 

あの日私が見たのは、亡くなってもなお、いつも通り散歩をしているおばあさんの姿だったのかもしれないと、Hさんは言っていました。