むいしきのいしき

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【怪談】通り道

こんばんは、山根こね子です。

 

 

これは私の大学時代の後輩のA君が体験した話です。

 

A君は大学の近くに一人暮らしをしていました。

 

バイトはしていましたが、アニメやゲームが好きなA君は趣味にかなりの金額を毎月つぎ込んでいたため基本的にお金は無く、住んでいたのもボロアパートでした。

 

 

とても大きな部屋とは言えないその部屋でしたが、いつも友人たちの溜まり場になっていました。

 

A君は明るい性格だったので、自然と部屋にも人が集まってくるんだろうと思っていましたが、どうやらそうではなく、A君が友人に声をかけては、毎日かわるがわる泊まってもらっているのだということを知りました。

 

 

「寂しいの?彼女でも作ればいいのに」

 

 

私がそう言うとA君は

 

 

「違うんですよ。怖いんです」

 

 

と真剣な顔つきで話し始めました。

 

 

 

一人暮らしを始めた日の夜のことでした。

 

初めての一人暮らしに期待と不安を抱えながらも布団に入ったとき、ドタドタと走る音が天井から聞こえてきました。

 

 

時刻は夜12時を回った頃。

 

 

こんな時間に子どもを走らせてるなんて非常識な親がいるもんだなぁ。

 

そう思いながら目を瞑っていました。

 

 

 

しばらく音を聞いているうちに気付いたことがありました。

 

 

それは、自分の部屋は2階建てアパートの2階にあるということ。天井の上を誰かが走るわけがないということを。

 

 

これはまずいと思い、ひとまず部屋の電気を付けるために身体を起こそうとしたら何故か身体が動かない。

 

 

「金縛りだ…どうしよう…」

 

 

そう考えていると、走る音がピタッと止みました。

 

 

「助かった!よかった!」

 

 

と思った瞬間、顔にサーッと何かが当たる感じがしました。

 

びっくりして反射的に目を開けるとそこには口を大きく開けた髪の長い女の顔がありました。

 

 

そこでA君は意識を失い、目覚めた時は朝になっていました。

 

 

その日は嫌な夢を見たくらいにしか思っていませんでしたが、次の日もまた次の日も同じようなことが続き、いよいよもって部屋がおかしいのではないかと考えるようになり、夜に1人で過ごすことが怖くなったため、毎日友人を呼んでいたという話でした。

 

 

A君の部屋に泊まりに行った人たちは

 

「あの部屋はヤバい」

「夜マジで天井うるさいから」

 

などと口を揃えて言っていました。

 

 

A君は同じアパートに住むおばさんに自分の住む部屋で昔何かあったりしたのか聞いてみたところ

 

「その部屋自体に特に何かがあるというわけではないんだけど、近所に有名な心霊スポットがあるからね。あなたの部屋がいわゆる通り道になってるんじゃないかって話は聞いたことあるけど」

 

そう話してくれたそうです。

 

 

A君は卒業までそのアパートに住み続けていましたが、身体を壊すことも不幸に見舞われることもなく、今も元気に過ごしています。